未支給年金の判決と国税庁の整理 2017年05月22日

未払給与・未払年金
遺族の方に支給される遺族年金は、所得税も相続税も課税されません。ただし、相続後に支給を受けるものであっても、その死亡した人に支給されるべき年金給付のうち未だ支給されていなかったもの(未支給年金)があるときには、未払いの給与などと同じように、相続財産になるのではないか、と考えてしまいそうです。

未支給年金の相続性
ところが、未支給年金については、「国民年金」についての最高裁の確定判決があり、未支給年金請求権について、最高裁はその相続性を否定しています。
国民年金法は、未支給年金を請求できる者の範囲及び順位について、民法の相続人とは異なる定め方をしています。
一定の遺族が「自己の名」で未支給年金の支給を請求することができるとした国民年金法は、遺族の生活保障を目的とした立場から未支給年金の支給を認めたものと解されています。

固有の権利とみなし規定
従って、年金受給権者の遺族で一定の要件に該当する人は、その人の名前で当該未支給年金の支給を請求することができます。
遺族の固有の権利に基づいて支払いを受けるものには、保険金や退職金などもあります。しかし、保険金や退職金と異なり、未支給年金には、相続財産とみなす規定もないので、相続財産ではなく、その遺族の一時所得の収入金額に該当します。

「厚生年金」と「共済年金」の規定ぶり
これを踏まえ、いろんな未支給年金の課税関係について見てみると、厚生年金法は国民年金法とほぼ同様の規定ぶりになっているので、先の未支給国民年金と課税関係も同様とすべきとなりそうです。
他方、「共済年金」では、請求権者の範囲及び順位について、民法の相続人とは異なる定め方をしているという点では同じですが、「遺族」がいないときは死亡した者の「相続人」に支給すると、いう規定も置いています。そうすると、死亡した者の「相続人」が支給を受けた場合には相続税の課税対象になるとも考えられそうです。

国税庁の整理
ところが、この場合も支給を受けた者の「一時所得」になると、国税庁ホームページでは整理しています。

相続課税割合公表値を読む 2017年05月16日

基礎控除引下げの影響の予測と結果
平成27年1月1日以後の相続から基礎控除額が60%に引下げられています。27年中の相続税申告の事績が昨年末に公表され、その制度変更の影響がどう表れているか明らかになりました。
亡くなられた方について相続税の申告がなされた割合は10年来4.1~4.4%で推移していたところ27年は8.0%と倍近い増加になっています。少し前までは、6%ぐらいを予測値としている情報が多かったところです。

公表結果値の概要
死亡者数は年々少しずつ増加し、ここ10年来で2割ぐらい増えてはいるところ、前年比では1.4%程度の増にすぎませんが、課税申告書提出件数は83.2%もの増になっています。
前年比の申告書の提出を要する課税実増加件数は46,804人で、それに対応する実増加申告財産額は32,276億円で、相続申告増加1件当たり約6,900万円です。実増加税収は4,208億円で、相続申告増加1件当たり約899万円です。

都道府県別比較をしてみると
課税申告割合、全国平均の8%に対し、都道府県別に高い方のベスト3をみると、東京15.7%(都内23区では16.7%)、愛知13.8%、神奈川12.4%です。東京の場合は、6.4人に1人の割合で相続課税がなされています。低い方のベスト3は、秋田2.2%、青森2.9%、鹿児島3.1%です。秋田の場合は、45.5人に1人の割合で相続課税されています。

変化の波と身近な経験的印象
課税対象となる割合の高い地域が、その割合の増加の程度も高そうに思ってしまいそうですが、課税対象割合の増加率を追ってみると、その高い地域の増加変化率は東京が最低で162%、次いで京都163%、大阪164%で、これがワースト3です。
逆に、増加変化率のベスト3は、富山246%、秋田244%、青森223%です。絶対数では、大都市圏で課税対象者割合が高いと言えるものの、基礎控除引下げの煽りを烈しく受けて変化の波に呑まれているのは過疎的地方なのかもしれません。

年休の半日、時間単位、計画的付与 2017年05月09日

年次有給休暇の付与
労働基準法では年次有給休暇(年休)は入社して6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した従業員に最低10日を付与する事になっています。例えば4月1日に入社して10月1日が初回の基準日であり、以降1年毎の応答日は毎年10月1日になります。企業によっては従業員に一斉の基準日を設けているところもあります。基準日方式と言いますが付与日数が法定要件を上回れば問題ありません。
パートタイマー等で週の所定労働時間が30時間未満、かつ週所定労働日数が4日以下又は1年間の所定労働日数が216日以下の従業員は、通常の従業員の所定労働日数との比率を考慮して労基法で定められた付与日数になります。

年次有給休暇請求の単位 半日
年次有給休暇を取得する時の請求は原則1日単位です。半日単位で請求する時は法には規定されていませんので就業規則等で定めておけばよく、半日とは何時から何時までなのかを決めておく事が必要でしょう。
先頃改正された看護休業や介護休業は半日単位の付与が義務付けられたので、請求があれば所定労働時間の2分の1を付与する必要があります。昼休み等を挟むと2分の1にならずに使いづらい時は協定で定めておけば運用できます。

時間単位の年休の請求
年次有給休暇は年5日以内であれば時間単位で付与する事も出来ます。病院に寄ったり、介護や看護等少し時間が欲しい時に使用できるものです。但し年休の残日数管理が少し煩雑になるでしょう。この場合も労使協定により従業員の範囲、時間単位として使用できる日数(5日以内)、時間単位の場合の1日の所定労働時間数を決めておく必要があります。

年休の計画的付与
年次有給休暇の消化率を高めるために企業による計画的付与制度があります。順番に休ませる事ができるのでヨーロッパ等では広く行われています。労使協定により各従業員の5日を超える日数について協定しておき年休を消化します。夏季や年末年始等に利用している企業もあります。
労使協定を締結するので原則、計画的年休に反対している従業員にも適用されます。

パート主婦の扶養の要件 2017年05月01日

103万円の壁とは
一般的に主婦の方がパートに働きに出ると収入額を意識する事が多いのが103万円の壁と言われるものでしょう。給与収入が103万円を超えると夫の収入から配偶者控除38万円が控除されなくなり課税になるからです。しかし103万円を超えて141万円までは配偶者特別控除があるので増える所得税は年5万から10万円と言うところです。103万円の壁と言うのは課税が始まる地点と言えます。この103万円超は平成30年1月より150万円超に変更されることになっています。配偶者特別控除も201万円までになりますので、課税され始める地点が150万円に変更される事になります。
企業で扶養手当、家族手当等の名称の賃金で出されている妻の扶養手当支給要件が妻の収入は103万円以下となっている場合、妻が就労制限をかけてしまう事も考えられます。政府や経営者団体はこのような場合は基準を検討するように求めています。

パートの社会保険加入① 106万円の壁
昨年の10月に従業員500人超の企業に勤める方に社会保険の加入が適用拡大されました。新たに加入対象者になる方は「週20時間以上勤務、月額88,000円以上」となっています。年間でみると1,056,000円となり「106万円の壁」等と呼ばれています。この対象は従業員500人超の企業ですから中小企業の多くは対象外です。一般的には「週の所定労働時間」か「月の所定労働日数」のいずれかが常用労働者の4分の3以上の勤務で加入対象となります。
平成29年4月から500人以下の事業所でも労使合意がありパートタイマーが適用条件に合えば加入できます。

パートの社会保険加入② 130万円の壁
年収130万円以上になると夫の健康保険の被扶養者から外れます。妻の勤め先で社会保険の加入要件に合えば加入するか、又は自身で国民健保、国民年金に加入する事になり、保険料負担が増加します。国民年金でも年間20万円位かかります。こちらの方が所得税の150万円の壁より意識せざるを得ない壁と言えるかもしれません。

馬券払戻金の所得区分と外れ馬券の必要経費性(ソフトウェア提供者側からの見解) 2017年04月25日

事件(裁判で争われた)の概要
馬券を自動的に購入できるソフトを使用してインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を上げていた被告人が、所得区分を一時所得ではなく、雑所得とし、その外れ馬券の購入代金が所得税法上の必要経費に当たるか否かという所得税法解釈の裁判です。

一時所得vs雑所得
(1)所得の区分(論点を下線で示します)
所得税法基本通達34-1の(2)で、一時所得の例示として「競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く。)」とありました。※判決が出てから(注)として本テーマにかかわる所得区分が追記されていますが、裁判前(注)はありませんでした。

(2)外れ馬券が他のレースの必要経費か?
当たり馬券の購入代金費用だけでなく、外れ馬券を含む全ての馬券の購入費用が、当たり馬券の払戻金という収入に対応する必要経費か否かが論点でした。

馬券購入ソフトの提供者側からの意見
本件は、平成27年3月10日に最高裁により、「一時所得であり、外れ馬券を含む全ての馬券の購入費用が必要経費となる」とされました。納税者側の税法解釈は、学者の方々の評釈をご参照ください。
かつて馬券を自動的に購入できるソフトを開発・販売していた会社を顧客にしていた先生に聞くと、事業の内容からして、当然雑所得と考えていたので、裁判が起こされ、第一審で納税者が負けた時は“なぜこの解釈”との感想を持っていたそうです。

<理由>

①馬券購入ソフトは、様々な過去のデータにより馬券の購入パターンを考案するものであり、競馬新聞の予想や当日の馬の状態は一切考慮しない、②その日のレースは勝てばそこで終了が原則である、③競馬レースを見ることなく着順の結果のみが興味の対象であり、位置づけは財テクであった等々、が理由であり、「営利を目的として継続的に行われている」ものとして雑所得になると考えていたとのことです。

実際の申告は会計事務所にご相談ください 

本判決は、「ソフトを使いインターネット経由で長期・多数回・頻繁に中央競馬会のPATにて購入」等が前提です。条件が違う場合には、課税区分や計算方法も変わってきます。実際の申告は、会計事務所にご相談ください。

市町村等が遡求認定する場合も 要介護認定と障害者控除 2017年04月18日

介護サービス受給者500万人はもうすぐ?
介護保険制度では、「要介護状態」や「要支援状態」になった場合には介護サービスを受けることができます。

要介護状態
寝たきりや痴呆等で常時介護を必要とする状態

要支援状態
家事や身支度等の日常生活に支援が必要になった状態

平成28年11月分における「介護保険事業状況報告(暫定)」では、居宅サービス受給者は約393万人、施設サービス受給者は約93万人に上ります。
最近は確定申告の相談で、「要介護認定で障害者控除を受けることができるか?」という質問を受けるのは定番となっています。

要介護認定と障害者控除
結論から申し上げますと、残念ながら介護保険法の要介護認定だけでは、障害者控除の対象とはなりません。
これは所得税の規定で障害者控除の対象となる者が、事理弁識能力がない者や身体障害者手帳の交付を受けた者などに限定されており、要介護認定者について、直接の言及がないためです。
もともと、障害者に該当するかどうかを実質的に判定することは専門医でなければ困難です。そのため、所得税の規定では、身体障害者手帳への記載の有無等によりできるだけ形式基準により判定することができるように配慮されています。
とはいえ、明らかに身体障害者手帳に記載される程度の障害があると認められる方もいらっしゃいます。そこで、介護保険制度の要介護認定者のうち、精神又は身体に障害のある65歳以上の者で、障害の程度が知的障害者又は身体障害者に準ずるものとして市町村長や社会福祉事務所長に障害者として認定を受けた場合には、障害者控除の対象となることとされています。

市町村等により障害者控除の遡求認定も
この場合、市町村長や社会福祉事務所長が交付した「障害者控除対象認定書」に遡求して認定する旨の記載がある場合には、その認定の年分から障害者となることになります。もし、遡求認定期間に障害者控除を行っていない場合には、過去5年間について期限後申告・更正の請求を行うことができます。

自主服薬推進のためのスイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)の創設 2017年04月10日

最近このセリフが耳に残りませんか?
最近のCMで「セルフメディケーション」という言葉をよく耳にしませんか。2017年1月1日から、特定の医薬品購入に対する新しい税制「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」が始まっています。
※セルフメディケーションは、世界保健機関(WHO)において、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義されています。

セルフメディケーション税制の概要
この制度は、きちんと健康診断などを受けている人が、一部の市販薬を購入した際に所得控除を受けられるようにしたものです。具体的には、「健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人」として、定期健康診断などを受けている人が、市販薬(要指導医薬品および一般用医薬品)のうち、医療用から転用された特定成分を含む医薬品を年間1万2000円超購入すれば、1万2000円を超えた部分の金額(上限金額:8万8000円)につき所得控除を受けられます。

注意すべき点
(1)健康の維持増進及び疾病の予防への一定の取組とは、特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診を言います。会社の検診も含まれます。
(2) 対象となる医薬品は、医療用から転用された医薬品:スイッチOTC医薬品と言われるものです。具体的定義がありますが、「共通認識マーク」を目印にしましょう。 レシート上では対象商品の横に★印(★以外の記号の場合もあります)が記載されたり、記号以外の方法で示されたりする場合もありますが、対象商品を明確に区分できるようになっています。
※OTC医薬品(一般用医薬品):薬局・薬店・ドラッグストアなどで販売されている医薬品。
(3)本特例の適用を受ける場合には、現行の医療費控除を受けることができなくなります。どちらかを選ぶことになります。
(4)この制度は年末調整では適用されません。自分で確定申告が必要です。
(5)レシートはマメに保存しましょう!

管理会計のススメ 課長なら知っておきたい利益貢献の尺度 2017年04月03日

会社に利益をもたらす源泉はどこにあるのか?
会社は売上を上げてそこから得た利ざや(=売上‐売上原価)を得ます。これは「粗利益」とも呼ばれ、その会社の“付加価値”を表します。この粗利益から会社の運営に必要な経費(=家賃+人件費+その他販売費および一般管理費)を賄い、それが本業での儲けとなります。
そのため、会社が事業を行って得た付加価値(=粗利益)こそが利益の源泉であり、本業での利益を実現させるためには、「粗利益の絶対額のアップ」が必要です。こんな事態に即答できるのが課長の会計力
設例:値引きと無料オプション、どっちが儲かる?
貴社は販売価格90万円(仕入価格63万円)の複合機を売っています。A社に訪問中の部下から、「2台の注文で1台あたり10万円の値引きを要求されている」と電話連絡が入りました。さぁ、あなたならどう対応しますか?こうした場面は日常よくあるのではないでしょうか。

A売上を確保するため10万円引きで2台販売する
B値引きは各4.5万円(5%)とし、その分1セット5万円(原価1万5千円)の交換用トナーを合計4本で20万円相当を無償でつける
(引用)山條隆史『社長!御社の会計 ここだけ覚えれば充分です』(フォレスト出版社 2012年)98頁。表面的な売上金額の多寡ではなく、どちらが粗利益が大きくなるかを考えます。
A値引きの場合、会社の粗利益は値引き金額そのものが減り、本来2台で54万円(=[90万-63万]×2)のところ34万円となります。お客さんは20万円得します。
Bオマケの場合、値引きが5%なので粗利益の減少は9万円(=90万×5%×2)で45万円の粗利益を確保できます。ただし、販売価格5万円のトナーを無償で4本つけるのでその分出費がかさみます。とはいえトナーは原価1.5万円ですので影響は6万円ですみ、会社の粗利益は39万円になります。一方でお客さんは9万円の値引きに加えて買えば5万円するトナーを4本オマケでもらうので29万円得します。
Bの方が自社も顧客も得しますので、対案としてBを提案させます。こんな思考が営業の人にも必要な会計力です。

会計思考は意思決定を助けてくれる
粗利益の絶対額からどちらが儲かるかを考える以外にも、管理会計的手法で、外注・追加注文の意思決定や撤退条件、投資の利益計画などがわかります。興味があったら会計事務所に相談してみてください。

現金商売以外は現金を持つなのススメ 2017年03月29日

現金の重要性
現金商売の場合、終業時には現金を実際に数えて、レジの記録と過不足がないかを確認し、過不足がある場合その原因を突きとめます。その日に原因がわからない場合も、一定期間保留し、原因をできるだけ追求します。毎日の現金実査と帳簿との照合が経理の信頼につながる、大事な仕事です。

現金が動くとその都度の記帳義務がある
ちょっとした支払いに備えて小口現金制度があったり、経費精算を営業マンの都合で適宜対応するために経理担当者に現金を持たせたりしている会社もあります。
会社法432条1項(会計帳簿の作成及び保存)では、「適時」の帳簿作成が定められています。そのため、現金出納帳をまとめて記帳するということはできません。お金が動けば、遅くともその日の終業時には現金を数えて現金出納帳を記帳しなければなりません。これって経理担当者にとって結構な心理的負担であり、かつ、時間と労力の無駄です。現金商売でない限り、現金が必要という心の呪縛は捨て去りましょう。

こうすれば経理担当者はストレス・フリー
現金を持たなければ、毎日の記帳義務はなくなります。定期的に決めた日程での記帳作業となります。また、仕事の途中で経費精算のために作業を中断させられるようなこともなくなります。こうすることで、経理担当者は仕事に集中することができることとなり、現金管理の精神的な負担や作業中断のストレスから解放されます。

立替経費精算制度で問題解決!
小口現金や随時の経費精算がなくなれば、不都合が生じるのではないかという懸念を持つ方もいらっしゃるでしょう。しかし心配無用です。下記で問題なく運用できます。

(1)立替経費精算制度
営業マンの交通費精算も含め全ての小口の経費精算は、定期的(毎月がベター)な報告書精算とし、支払は給料日にまとめて行います。経理担当者は確認作業をまとめて行なえ効率的な仕事ができます。精算する営業マンも提出期限に遅れると翌月まで返金されないので精算遅れが少なくなります。

(2)事前仮払金前渡制度
入社時に平均的な経費精算額よりも少し多い金額を前渡しします。一種の定額資金前渡制度(インプレストシステム)です。
なお、臨時の出張等でお金が必要になる際は、事前の仮払申請に都度口座振込で対応すれば解決します。

法人事業の開始と個人事業の廃止 法人成りの年分の確定申告 2017年03月22日

「法人成り」(会社設立)年分の確定申告
個人事業者の方が「法人成り」(会社設立)をした年分の確定申告は、通常年分と異なり、いろいろと厄介です。基本的には次のような所得を申告することになります。
①法人成り直前までの事業所得
②会社からの給与所得
③設立した法人に譲渡した資産の譲渡所得
③で個人の不動産を法人に譲渡すると多額の譲渡所得が生ずる場合もあるため、不動産を個人名義とし、法人と個人との間で不動産賃貸契約を締結するケースも多くみられます。この場合、「法人成り」の年分から、「不動産所得」が生ずることになります。
また、会社から配当があれば「配当所得」が発生します。

 

個人事業廃止年分の届出・減額承認申請
所得の種類が増えるということに加えて、個人事業の廃止年分の届出や特殊な処理・手続きが生じます。

(手続1)個人事業廃止に伴う届出
事業を廃止した場合には、原則的には「個人事業の廃業届出書」を廃止の日から1月以内に納税地の所轄税務署長に提出することになります。「青色申告の取りやめ届出書」や「給与支払事務所等の廃止届出」等の提出も必要となります(青色申告の効力は廃止年分の翌年に失われます)。

(手続2)予定納税の減額承認申請
上記の廃業届出書の提出をしただけでは、前年の事業所得の金額に基づいた予定納税の通知が行われてしまいます。そのため、廃止時期にもよりますが、「減額承認申請」の手続きを行っておいた方がよいでしょう。

個人事業廃止年分の事業税の見込控除
個人事業者の皆さんは、個人事業税は、ご自身が申告した所得税の確定申告データが都道府県税事務所にわたり、賦課決定された通知額を納付していたと思います。
個人事業の廃止年度の事業税も同様に確定申告後に税額が通知されることになりますが、これでは個人事業の必要経費に算入することができません。そのため、廃止年度の事業税は通知を待たず、「見込額」を必要経費に算入することができます。この場合の事業税計算の事業主控除290万円は月数按分することになります。
また、確定申告書Bの第二表「住民税・事業税に関する事項」の「前年中の開(廃)業」欄の「廃業」を○で囲み、その月日を記入します。